第一章 はじまり

第2話 暗黒の地の底にて

「また怪物があらわれたぞーー!!」
だれかが叫ぶ。
声の聞こえる方向に、熟達した戦士たちは
一斉に駆け出していく。
「お、俺も行かなくては・・・」
目の前には巨大な虫の骸がころがっている。
トゥルーは、すでに疲れきっていた。
ドラコも息を切らせている。
巨大なドームの中の湿り気のある重い空気の中で、
いったいどれくらいの時間、戦っていただろうか。
次から次へと現れる邪悪に満ちた強大な敵は、
彼の鎧と体力をいとも簡単に削っていった。
ドラゴンの骸すら、ここでは珍しくないのだ。
それでも、死闘の末、たった今、なんとかこの巨大な虫をも這い蹲らせたのだ。
いったい、何のためにトゥルーや彼らは、傷つき、倒れるまで
戦い続けるのだろうか?
少なくとも、トゥルー、
彼には、目的があった。
生涯を賭して達成すべき、いや、
しなければならないという思いが心を駆り立てる。
胸に燃え盛る復讐の炎。
その目的を成し遂げるためには、手段を選ばなかった。
死ぬことは、許されないのだ!
そのためには、ネクロマンサーの呪文を唱えることも辞さない。
だが、怪物らの敗因は別なところにあった。
それは、彼の心の奥底にある。
闘志の炎を消すことは、たとえ地の底の悪魔や、神でさえ、決してできない。
むしろ、追い詰められるほどに、彼の生きるための根源たる
闘志には油が注がれ、その炎は、いっそう輝きを増してゆく。
極限状態こそが、成長を促すと彼は信じている。
そうして、ここまで生き延びてきた。

さすがにボロボロの体を立たせるには骨が折れそうだったが、
戦うたびに、刃こぼれした刀が切れ味を増していく感覚は、
強烈に彼の心を捉えていた。
今、まさに極限状態で成長しているのだ。

「うおおおぉぉぉーー!!」
渾身の叫びは、怪物すらも驚いたことだろう。
トゥルーはよろりと立ち上がり、ドラコに跨ると、再び戦いの中へ身を投じた。


そもそも、何のためにこの奇妙なドームが建設されたのだろうか?
位置的に、アンブラの東のはずれにあり、
人間の髑髏が詰まった恐ろしげな装置類や、生ける屍が徘徊していることから、
さしずめ、ネクロマンサーの実験施設であるとおもわれる。
この巨大な虫や、今戦士たちが戦っている怪物などは、
ほぼ完全に、外界とは隔絶されており、
生物であるとすれば、この中では活動に必要なエネルギーを得られない。
アンデットであっても、何らかのエネルギーは必要である。
マラス大陸独特の生態系も関係があるかも知れないが、
あの恐ろしげな装置で人間の生命エネルギーを利用し、
何者かが召還している可能性が高いだろう。
何者か。はっきり言ってしまおう。
あの悪名高き邪悪なネクロマンサー、マアブス。
この異常さは、彼による実験の成果ではないのだろうか?
そうであるならば、
これだけ巨大な実験場の最終的な目的は、
地獄に落ちたであろうマアブスと共に失われたことになるが、
とらわれの囚人等は永久に召還されつづけるのだ。

すべての事実と答えは、アカシックレコードに記録されていることだろう。
狂気に取り付かれた哀れなマアブスの目的、
これから起こる、トゥルーや仲間の運命すらも。
その真相に触れられるものは皆無であろうが・・・。

第三話 垣間見た死


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