第一章 はじまり

第四話 運命の瞬間

「立て!!」
どこからともなく聞こえる、そのたのもしい声には少し聞き覚えがあった。
どこからの声だろう?
いつの間にか傷もいくらか癒えているようだ。
「まだ戦えるだろう!あきらめるな!!」
その声はトゥルーを奮い立たせた。
そういった励ましなどとは無縁の世界にいたトゥルーは
なにかこみ上げてくるものに多少戸惑い、
しばしの疑問が頭の中を交差する。
なぜ?
ここは地獄だろう?
おれは地獄の中で生きてきたはずだ・・・
助けなど皆無のなずなのに・・・

再び、
「もう少しだぞ!死力を尽くして戦うんだ!」
魔法による治療を施してくれたのだろう、傷口がみるみる間に塞がっていく。

その声に答えたいと思った。


アンデットどもが生命のにおいを嗅ぎ取って再び襲い掛かってくる。
数が多すぎる!
回復魔法をかけてくれた謎の人物や、
その他の豪傑でさえも身を守るのが精一杯のようだ。


もはや、怒りは目の前に立ちはだかる悪魔にしか向けられることはなかった。

そうしている間にも次々と倒れていく戦士たち。

トゥルーは、自然に詠唱を始めていた自分におどろいた。
パラディン究極の能力「ホーリーライト」。
トゥルーの体が光に包まれていく。
心地よい光だが、
悪意に満ちたものには脅威の炎と化すこの能力は
トゥルーに死ぬほどの苦痛を与えた。
光が極大に膨れ上がり、一瞬の閃光となって消えた。
邪悪な召還生物と共に。

しかし、いぜんとしてドームの主たる悪魔はそこにいる。
戦士たちに斬りつけられても、
まったく意に介さないかのようにトゥルーを見つめている。
いや、にらんでいる。
奴隷を殲滅させたことに腹を立てているのだろうか?

「来いよ」
彼がにらみ返すと同時に、悪魔は猛然と向かってきた。
戦士たちがはじけ飛ぶ!
その前進を止められるものなどいないだろう。
第1撃!
盾で受け流したが、ものすごい衝撃に腕がしびれた。
間髪をいれずに繰り出される攻撃に、
トゥルーは防御に撤するしかなかった。
直撃こそ受けないものの、それでも確実に体力を奪われていく。
魔法による治療に助けられ、なんとか命を永らえてはいるが
それも時間の問題に感じた。

一太刀浴びせることが出来た。
と、次の瞬間、猛烈な反撃をくらった!
ネクロマンサー呪文による攻撃反射の呪文だろう。
数十メートルは吹き飛ばされた。
立ち上がる体力すら残されていないトゥルーに
悠然と近づいた悪魔は、とどめをさすために腕を高くふりあげた。
「ここまでか・・」
あきらめかけたその刹那、
きらめきを放つ影がトゥルーを飛び越したかと思うと
すでに腕を振り下ろし始めている悪魔を弾き飛ばした。

なにがおきたのだろう?
立ち尽くす戦士たち。
めったに見られない光景だったに違いない。
状況を判断するためには少しの時間が必要だった。

鈍く光る金属を纏っている。
それはこの暗黒の地底の底において、いかに離れていてもトゥルーの目には届いただろう。
それは・・・。

ドラコだ!
ドラコがいる!

親父のトールが鍛えたバーディング鎧が
光をキラキラと反射していた。
トゥルーを守るかのように立ちはだかっている。
よく見ると、退化した右の翼が折れているではないか。
突進した際に折れたようだ。
しかし、なぜそこまでして・・・。
いままでドラコのことを省みたことはなかったのに・・・。
トゥルーの気持ちが変化したのを読み取ってくれたのであろうか?
いや、
理由などはいらないじゃないか。
仲間が帰ってきたのだ。
仲間・・・。
そう、このとき初めてトゥルーはドラコを仲間と呼んだ。
そして急激にドラコが愛しくなった。

「早く乗れ」
悪魔をにらみつけながら、ドラコがそう言っているような気がした。
最後の力を振り絞ってドラコに跨り、
ぽんぽん、と、親友のせなかをたたいたあと
精神を集中し始めた。
パラディン魔法によって、
敵の弱点を見抜き、武器の威力を高めた。
そして、不本意ながら、
ネクロマンサーの術により血の盟約
(呪いによって自分と相手の体をリンクし、痛みを共有する)
を交わしおわると、
まるでわかっているかのようにドラコは走り出した。
これが最後の戦いだ。これで決まるだろう。

みるみる距離が縮まっていく。
今までにないスピードだ。
戦士たちが、圧倒されて彼らの為に道をあけていく。
トゥルーは、なんだか楽しくなってきた。
ドラコも同じ感覚を味わっているだろうか?
盾を投げ捨て、刀のグリップを両手で握り締めた。
すれ違いざまに、敵の首もとに深々と刀を突き立てた。
と同時に痛恨の一撃をくらう。

ぼきぼきと体中の骨が折れ、口から血を噴き出しても、
トゥルーは力を緩めなかった。
彼の口元には余裕の笑みがあった。
「ざまぁみろ・・・。」
トゥルーの傷は悪魔の傷になりえた。
悪魔が膝をつく。
動きが鈍くなっている。
「とどめをさせーー!!」
トゥルーが叫ぶと、一斉に戦士たちが
剣をつきたてた。

悪魔はまたもや、
戦士たちをはじき飛ばしながら立ち上がったが
力尽きたか、後ろへとたおれ、動かなくなった。

第五話 覚醒


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